Case Study

【前編】宿場町の古民家で始まった、時を重ねるコーヒー店。「曾根商店 白井宿カフェ焙煎所」が描く100年続く場所づくり

INTRODUCTION
群馬県渋川市でかつて宿場町として栄えた白井宿。歴史ある町並みの中に、古民家を活かしたコーヒー屋があります。
2021年にオープンした「曾根商店 白井宿カフェ焙煎所」。
長く使われていなかった建物を少しずつ整えながら、スペシャルティコーヒーの自家焙煎店として営業を続けてきました。
店内には古い柱や什器などがそのまま残り、落ち着いた時間が流れています。

古民家を活かした店作りと、この場所で続けていくことについて、店主の曽根真志さんにお話を伺いました。

すべては「コーヒーが好きだった」ことから始まった

群馬県渋川市の宿場町・白井宿。
石垣や白壁が続く歴史ある町並みの一角に、古民家を活かしたコーヒー屋があります。

2021年にオープンした「曾根商店 白井宿カフェ焙煎所」。店を営むのは曽根真志さん。学生時代からコーヒーやカフェが好きだったといいます。

まずコーヒーが大好きで、カフェという空間にも興味がありました。カフェにいる時間とか、コーヒー屋の仕事とか、そういうものに学生の頃から関心がありましたね。

大学卒業後は、家業のこんにゃく製造会社「子持食品株式会社」に入社。会社で働く一方で、コーヒー屋をやってみたいという気持ちはどこかに残っていたといいます。

そんな思いが大きく動いたのがコロナ禍でした。

ちょうどコロナのタイミングで時間ができました。いろいろ自分のことを見直す機会でもありましたし、『今やろう』と思いました。

曽根さんは当時をこう振り返ります。

好奇心からの勢いがかなり大きかったですね。今思えばその勢いがないと、なかなかできなかったと思います。

振り返るようにそう語る言葉には、当時の時間が静かに重なっているようでした。

ビジョンは「100年続く営みと文化の創造」。その背景には、曽根さんの家業の存在がありました。

家業がもうすぐ創業100年を迎えます。実際に長く続いているものを身近に見てきたので、100年というのも現実的なものとして捉えられていて。どういう形なら続いていくのか、ということは多少イメージがありました。せっかく始めるなら、すぐ終わるものではなく、何かの役に立ちながら、長く続いていくものにしたいと思いました。

長く続くことを前提にした考え方が、このビジョンにつながっているという曽根さん。また、「曾根商店」という名前にも、この場所の歴史が反映されています。

もともとこの場所で先祖が質屋を営んでおり、そのときの屋号が“曾根商店”でしたので、これは活かしたいと思いました。コーヒーがメインではありますが、地域の活性化や今後の事業展開など、商売を続けていく上でのさまざまな可能性を残したいと考えました。

これから先の変化も含めて、余白を持たせた名前でもあるのです。

家業が残してくれた“古民家”という選択肢

コーヒー屋を始めるにあたっては、新築やテナント出店も選択肢として検討していました。

当時は古い建物にそこまで興味があったわけではなくて、新しくてきれいなカフェも好きだったので、そういう店もいいなと思っていました。ただ、いざ具体的に考え始めると、資金面の問題もありますし、実際“歴史ある建物が身近にあった”というのは大きかったですね。使われていなくてもったいないという気持ちもありましたし、客観的に考えても、ここには価値があり、残していけたらさらにその価値が大きくなっていくのではないかという可能性を感じました。

新しく作るか、既にあるものを活かすか。そうした選択の中で、この建物を使うという方向が少しずつ現実的なものとして浮かび上がっていきました。

最初からここでやろうと決めていたわけではなくて、いくつかある選択肢の一つという感覚でした。“ここでやる理由”を積極的に見つけたというよりも、状況を整理していく中で、自然と選択肢が絞られていった感覚に近いのかもしれません。

そうして少しずつ、この場所で始めることへの納得感が形になっていきました。

傷みの残る建物に見えた可能性とは?

この建物は、古くから居住と仕事場の役割を持ち、曽根さんの家業の歴史が重なる場所です。

ただ、近年では日常的に使われていたわけではなく、白井宿の八重桜の時期に数週間イベント的に使用される程度でした。そのため、建物の状態にはばらつきがあったといいます。

今使っている部分は比較的きれいではありましたが、奥の方は床が抜けている部屋や、シロアリの被害もあって、かなり傷みが進んでいました。ただ、その一方で、梁や柱、土壁の感じはすごく好きで。飾られていない、そのままの状態が残っていました。

長く使われていなかった時間が、老朽として現れていた一方で、必要以上に手を加えられていないからこそ残る表情にも魅力を感じていました。

一方で、白井宿は曽根さんにとって、もともとは“当たり前の場所”でもありました。

高校生まではずっとこの白井にいたので特別な意識はなかったのですが、外に出てみて、改めて良い場所だったのだなと思いました。

外に出たことで見えてきた、この場所の価値。建物と白井宿という環境の両方が重なり、この場所で何かを始める意味が少しずつ形になっていきます。

こうして曽根さんは、この古民家でコーヒー屋を始めることを決めました。しかし、営業できる状態にするまでには、想像以上の工程が待っていました。

記事の後編はこちらから

【後編】古民家を直しながら続けていく。「曾根商店 白井宿カフェ焙煎所」が育てる、場所のこれから

  • リノベーション
  • 古民家
  • 曾根商店白井宿カフェ焙煎所
  • 渋川

Contact

古民家を所有している方

空き古民家、どうしよう。古民家の処分(売却、賃貸借)てどうすればいいの?

古民家を活用したい方

古民家を活用してみたいけど、購入?賃貸?どちらがいい?

民間事業者の方

行政、まちづくり会社、不動産会社、設計事務所、工務店、移住コーディネーター等。
コミンカコナイカ事業にチームメンバーとして参画しませんか?