Case Study

[後編] 東吾妻町にある築250年の土蔵造りのお店「朝陽堂」 人が人を呼び縁になる建物が持つ力

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[前編] 東吾妻町にある築250年の土蔵造りのお店「朝陽堂」 古いものの良さに光をあてるリノベーション

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INTRODUCTION
東吾妻町にある築250年の土蔵造りのお店「朝陽堂」は、1階は古本と新刊、雑貨を販売していて店内で喫茶を楽しむこともできます。奥の階段から2階に上がると、梁が見事な広いスペースがあり、多彩な作家さんが展示を行うギャラリーとしても開かれています。

記事前半では、その歴史の長さと比例するように積み重なった膨大なモノたちとの並々ならぬ「片づけ」との格闘や、元の姿を生かすことを大切にしたリノベーション工事の様子をお伝えしました。

後半は、リノベーション工事が完了して再び町に開いた朝陽堂と、古民家に住みお店を営む日常について、店主の山口純音さんに伺います。

人が人を呼び縁になる、建物が持つ力

改修工事も終わり、2021年1月に新たな朝陽堂がスタートを切りました。屋号は色々と別の名前も考えてみたものの、やっぱり朝陽堂でいこう、となりました。昔のお店の様子を知っている地元の人からは、「あの朝陽堂がこんな風になったの!」と驚きと喜びを持って受けとめられたそうです。

店内に並ぶ書籍は古本が9割。開店当初は昔の朝陽堂書店の在庫も引き継いでいましたが、5年経つと内容もだいぶ入れ替わってきたそうです。お店の一角では、うつわなどの工芸も展示販売されています。親交のある作家さんたちの作品で、朝陽堂の雰囲気に合うものがセレクトされ並べられています。

客層はすごく幅広いです。本がお好きな大人の方が多いかなと思いますけど、絵本も置いてあるのでお子さん連れの方もいらっしゃるし、高校生の常連さんもいます。こういう雰囲気が好きって言ってくれる面白い子です。(山口純音さん)

取材で伺った日は、歴史好きとみられるご年配の男性方が集まり、コーヒーを飲みながら語らっていました。お店には先代のおじいさんが集めた郷土史の古書がたくさん残されていて、壁一面に並べられていますが、そういった古書や歴史に興味のあるお客さんも多いそうです。おじいさんは郷土史研究の夢を果たす前に亡くなってしまったそうですが、時を経た今の朝陽堂が、歴史愛好家も通ってくれるようなお店になっていることに、じわりと胸が熱くなりました。

実は開店当初は喫茶はやっていなかったんです。そんなに色々とやれるかわからなかったし、そもそも田舎で人が来てくれるのか、お店としてやっていけるのか手探りの状態だったので、まずは本屋からと思っていたんです。そうしたら、コーヒーは飲めないのか?ってたくさん聞かれたり、メニューも何もないのに勝手にコーヒーを注文し出す人もいたりで…(笑)。ついでに本を買ったりするかもしれないから喫茶をやったほうがいい、ってお客さんからすごく言われて。(山口純音さん)

強引ながらも温かいリクエストに応える形で、喫茶もスタートしました。

SNSで見た朝陽堂の雰囲気に惹かれ来てくれたお客さんが、今度は誰かを連れて来てくれたり、自分のSNSでも紹介したり。お客さんがお客さんを呼んでくれるような形で、地元だけでなく、あちこちから訪れてくれるようになりました。2階のギャラリーも同じように縁が広がっていきました。

私たち夫婦も美術をやっていたので、ギャラリーは当初から考えていました。こんなところで、って言ったらあれですけど、思いのほか使ってくれる方がいます。ありがたいことに、お客さんが『ここの雰囲気と絶対合うと思う。』って自主的に知り合いの作家さんをコーディネートしてくれたり(笑)、展示に訪れた別の作家さんが自分もここでと、ご縁がつながっていったりしています。(山口純音さん)

言い表せない何かを受け継いだ

テーブル席が置かれている部分は、昔は下屋だけがあるお店の軒先でした。小上がりからが店の中で、今も往時を伝える木製シャッターやそれを留める楔が残されています。古風な外観を変えたい、というおじいさんの要望で、昭和の後半になって外壁が作られ建物の一部になったそうです。

明治の頃のこの建物が描かれている版画も見せてくれました。この時にはすでに朝陽堂という屋号が使われていて、今よりも左右にもっと長く建物がつながっていました。お酒や日用品を扱う商いを行なっていて、「昔はきっとうんとお金持ちだったんだと思います。」といいます。

この頃の山口家には、文明開化の時代に町の発展に尽力した六平さんという方がいました。私財を投げ打って橋をかけ道を結び、牧場を経営し馬車鉄道を引き、学校設立を誘致したりと幅広く地域のために事業を展開した人物で、その生涯は隣町・中之条の博物館にも特集されています。

片づけをしていた時に、町の偉人でもある六平さんに関するものが色々と出てきた時は、私も感動しました。道半ばで早逝して家も傾いちゃったそうなんですが、そういう先人の思いをむげにはできないなって。変なことをしたら悪いなっていうか、言い表せない何かを受け継いだ気持ちになっています。(山口純音さん)

築250年の建物で暮らすということ

朝、布団の中で目が覚めてパッと天井を見上げた時とか、お店の2階の梁がふと目に入った時とか、『これって250年前のものなんだよな、すごいなぁ。』って今でもしみじみ思うことがあるんですよね。時間をかけてこれだけ立派な木材を作って、重機とか無かっただろうけどこれだけのものを建てて。ふとそんなことに思いを馳せてしまうことは時々あるんですけど、何だかいいなって思います。(山口純音さん)

古民家で過ごす冬はとにかく寒く、昔のまま改修していない部屋では室内でも吐く息が白くなることも。それでも快適な新しい家では味わうことができない、歴史に守られて今があるという感覚や空気に価値を感じているといいます。普通より手間がかかるお掃除にも気持ちよさがあるそう。

古い家ってとにかく隙間があるから、風が吹けば外から砂埃も入ってきて。何もなくてもすぐざらざらになっちゃうから、こまめに拭き掃除しないといけないんです。面倒くさくもあるけど、今自分が拭いている大黒柱とか古い床とかは250年前からずっと昔の人も拭き続けていて、これからも建物が磨かれていくんだって。大きな時間の流れや長い歴史の中にたまたま自分も入ったんだなって思うと、手間がかかる掃除もそこまで嫌な時間ではなくなるんですよね。(山口純音さん)

古い家ってとにかく隙間があるから、風が吹けば外から砂埃も入ってきて。何もなくてもすぐざらざらになっちゃうから、こまめに拭き掃除しないといけないんです。面倒くさくもあるけど、今自分が拭いている大黒柱とか古い床とかは250年前からずっと昔の人も拭き続けていて、これからも建物が磨かれていくんだって。大きな時間の流れや長い歴史の中にたまたま自分も入ったんだなって思うと、手間がかかる掃除もそこまで嫌な時間ではなくなるんですよね。

この場所に宿る物語の積み重ねはここの大きな財産だし、それを活かしていける面白さがあります。古い建物の維持にはお金がかかったり手間がかかったりもするけど、新しい建物にはない価値ですよね。(山口純音さん)

どんな古民家にもそれぞれのストーリーがあるもの。これから活用を考えている方は、どんな物語と出会えるか楽しみながら、場所探しをするのもいいかもしれません。

朝陽堂
〒377-0801
群馬県吾妻郡東吾妻町大字原町444番地2
https://choyodo-web.studio.site/

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