Case Study

妙義山麓にある、森の中の小さな宿sazare

INTRODUCTION
東京に住む夫婦が50年前に建てた別荘。森の中の小さな平家は、自然の中で過ごしたい都会に住むご夫婦を癒してきました。

妙義山の麓では、かつてバブル期に別荘地開発の計画が持ち上がったことがあったそうです。
当時、軽井沢をはじめ全国各地で別荘地が次々と生まれ、妙義町もそのひとつとして名を連ねました。
しかし大規模な開発には至らず、
いま残っているのは、森の中に点在するこじんまりとした小さな別荘だけ。
そのうちの一棟を、首都圏から移住してきた建築士が手を入れ、
時間を重ねた建物の記憶を残しながらリノベーションしました。
こうして生まれ変わったのが、宿「sazare」です。

森の中で、四季の移ろいを味わう特別な場所。
周囲に民家はなく、ただ森に抱かれるように佇んでいます。
耳に届くのは、鳥のさえずりや、木々を抜ける風の音だけ。
決して便利な立地ではありません。
けれど街中では決して味わうことのできない、
自然の空気と、ゆっくりと流れる時間を、全身で浴びることができます。
日常から静かに切り離され、
身体と心が自然にほどけていく。
ここは、自身の中にある「中庸」を取り戻すための宿です。

――森に呑まれかけていた

改装する前の建物は、周囲の森の管理も行き届かずに
建物ももう間も無く深い森に呑まれてしまうのではないかと思えるくらい
鬱蒼とした姿をしていました。
人の手が入らず使われない空き家というのは
どこか悲しげで暗い印象を受けてしまいます。

劣化する室内

室内には、ここへ通えなくなってしまったご家族の私物がそのまま残されており、
天井には動物によるものか、雨漏りによるものか判別のつかない穴やシミも見受けられました。
実際に手を入れてみなければ分からない課題を多く抱えた家だ、というのが第一印象でした。
それでも、南側に大きく開かれた窓とテラス、
そして何より、360度を森に囲まれたそのロケーションには、
強いポテンシャルを感じさせるものがありました。
「きちんと整えれば、きっと素晴らしい場所になる」
そう思い、私たちはこの家を綺麗にするための工事に着手しました。

建物の使い方について思案を重ねる中で、
この場所は「宿」として生かすのが最もふさわしい、という結論に至りました。
そこで、もともと三つに分かれていた部屋を一つの空間につなげ、
森へと視線が抜ける南側の窓を大きく設けることにしました。
閉じた印象になりがちな森の中に、
あえて光と風が通り抜ける、開放的な空間をつくる。
そんな考えのもと、間取りの計画を進めていきました。

あわてんぼうの大工が作ったのだろうか

壁や床を一つひとつ解体していくうちに、
この家をかつてつくった人の仕事ぶりが、少しずつ浮かび上がってきました。
床を剥がすと、建物を支えるはずの束が構造体ときちんとつながっていなかったり、
壁の中では、筋交いの長さが明らかに足りていなかったり。
正直なところ、「丁寧につくられた家」とは言い難い箇所が、次々と見つかりました。
それでも、どこか憎めない。
きっと、あわてんぼうの大工が、一生懸命につくったのだろう。
そう思いながら、問題のある部分はきちんと直し、
あえて一部は見える形で残しつつ、空間を整えていきました。

約一年にわたる改修工事を経て、
この空間は新たに宿 sazare として生まれ変わりました。
天井は船底天井とし、
かつての大工が組み上げた屋根の構造が、そのまま感じられるように。
床も天井も無垢の木でつくり直し、
窓の外に広がる自然の景色と、静かに呼応する空間としました。
キッチンも新たに設え、
そこに置かれる器には、作家の手によるものを選んでいます。
自然光と暖炉の灯りに包まれた室内は、
かつての鬱蒼とした印象から一変し、
清廉で、どこかやわらかな時間が流れる場所へと変わりました。
こうして sazare は、
ただ泊まるための宿ではなく、
心と身体を静かに整えてくれる場として完成しました。

Contact

古民家を所有している方

空き古民家、どうしよう。古民家の処分(売却、賃貸借)てどうすればいいの?

古民家を活用したい方

古民家を活用してみたいけど、購入?賃貸?どちらがいい?

民間事業者の方

行政、まちづくり会社、不動産会社、設計事務所、工務店、移住コーディネーター等。
コミンカコナイカ事業にチームメンバーとして参画しませんか?